(住職の法話)「白壽 (はくじゅ)」
- 2018/08/28
- 法話
白壽 (はくじゅ)
六月の上旬に数え年で九十九歳になる檀信徒のおばあちゃんが旅立たれました。親孝行な息子さんや娘さん、お孫さん、曾孫さん、そしてたくさんの親族の方に見送られて旅立ちました。
もう何年も前のことですが、お盆やお彼岸にお参りに行った時、「仏さまのよだれかけを作りました。お役に立ててください」と言って、渡してくれました。百枚以上を何度か受け取らせていただいたのですが、本当に有難いことでした。よだれかけの不足が気なっていたときだったので、今でもよく覚えます。90歳を過くてからも作り続けてくれました。
通夜の席でお話しさせていただいたことですが、金剛寺の地蔵山には、石仏が200体以上あります。年末の掃除のときに新しいよだれかけをその一体一体に着け、新年を迎えてもらいます。おばあちゃんの作ったよだれかけもたくさんの石仏につけさせてもらいました お大師さん、大日如来さん、お薬師さん、お釈迦さん、お不動さん、観音さん…に着けています。
仏の世界の入口ではよだれかけを着けてもらった仏さまたちが、ニコニコ顔で微笑んで出迎えてくれていることでしょう。そして、「あなたが私たちのよだれかけを作ってくれたのですね。ありがとう。これからは私たちと一緒にこの世界で楽しく暮らしましょう」と、仏さまたちから言われるに違いありません。
誰もが、いずれは仏さまの世界に行きます。その時に、仏さまたちからおばあちゃんのように微笑んで迎えてもらえたなら本人も遺族もどんなに幸せなことでしょう。
生前中に積んだ功徳は、さまざまなところに”おかげ″を与えてくれます。自分自身や家族、友人に与えてくれます。
自分に残されている時間が、自分が今まで生きてきた時間より少ないと思うと、今とこれから先の生き方を、もう一度考えてみることも大切なことのように思えてなりません。
南無大師遍照金剛 合掌